えりちん「描かないマンガ家」
こちらの作品「描かないマンガ家」は、タイトルの通りにマンガをテーマとして作品になっています。
マンガ界といえば、絶えず新たな作家が生まれ、常に新しい作品が生み出される場所です。
主人公である渡辺勇大は、二年制の大日本エンターテインメント専門学校漫画家養成コースに通う27歳。
漫画家養成コースということで、そこにはプロのマンガ家を目指す若者が集まっています。
ですが、勇大がやっていることといえば、自分のペンネームのサインの練習に明け暮れたり、同じ専門学校生とマンガに関する持論を熱く語ったり、肝心の「マンガを描く」ということを一切しない「描かないマンガ家」です。
にもかかわらず、口では「週刊少年ダンプ」という人気雑誌での連載を目標に掲げるばかり。
そのうち同じ専門学校の仲間たちは、勇大よりもはるかに若いのにも関わらず、次々にマンガ家への道を進んでいきます。
が、それでも勇大はいっさいネーム(マンガの構想を決めるための下書きのようなもの)をを描くことすらしません。
そんな見ていて哀れみすら出てくる「描かないマンガ家」が中心の作品ですが、その中では主人公の周囲の人物が持つ、夢を目指すという情熱がひときわ目立つ、実にまっとうな青春なのです。
そして実は、何かを目指したことのある人にとって、勇大の姿は過去の自分と重なってしまうところがあるかもしれません。
それくらい、この主人公は「わかる人にはわかってしまう」キャラクターなのですね。
耳の痛くなるような言葉もありますが、夢を持つこととその先にある現実について考えられる、芯のあるストーリーです。
Kindle価格は¥680、紙の本と値段は同一です。(2014年1月現在)